救いってなんだろう

2014年1月 3日(金) 17:53 | 日記


きのう名古屋の久屋大通を歩いていたら、ひさびさに変なものを見ました。

写真のような黄色い立て札を持った若い男性が、交差点ごとにひとりずつ立っていました。総勢6人ぐらい。
男性はただ黙って立っているだけ。立て札に取り付けられた小さなスピーカーから、音声が延々と流れます。やれ神がどうだとか、キリストがどうだとか。説法でしょうか。中年男性っぽいナレーションですが、あの薄気味の悪い声は狙って出してるんですかね。
元締めはおそらく、たまに街で見かける「死後さばきにあう」とかの標語みたいなやつをプロデュースしている団体です。

黄色に黒という色づかいは道路標識でいうところの警戒標識と同じで、幅員減少とかつづら折りありとか横風注意とか同じように「よい子の諸君は警戒するんだぞ」というメッセージを暗に含んでいるように見えましたが、よく聞くとそんなに過激なことは言ってません。
それでも自分にとっては、世の中の気持ち悪さを5段階に分けたら間違いなく5になります。聖書を読んだことがある人でも4か3じゃないですかね。聖書の中でも気味の悪いエピソードばかりチョイスしているような気がするので。

特に違和感が大きかったのは、立て札を持つ男性がみんな幸せそうに見えないことです。なんていうか、暗い感じのファッションも含めて、左翼の過激派みたいでした。
これと近い雰囲気を感じたのは、今から14年ほど前に、ある雑誌の取材で大須のパソコンショップを回っていたときに、たまたま入った「APC」という店でした。そこだけ明らかに店員の雰囲気が違っていました。抜け殻というか、生気がないというか。もしかしたらと思って帰って調べてみたら、やっぱり旧オウム真理教が経営する店でした。

聖書の教えだかキリストの教えだか知らないけれど、その教えにどっぷり浸かっているはずの街頭に立つ若者たちが、あまり幸せそうに見えないのです。視点はどこか定まらない感じで、自信があるようでも自信がないようでもなく、感情そのものが薄いように見えました。
もちろんこれは僕が勝手にそう思いこんでるだけで、実際には彼らの心は自信と確信で満たされているのかもしれませんが。

救いってなんだろう。
世の中には自分の力じゃどうにもならないこと、理不尽なことがあり、世界から拒絶された気分になることがあります。その理不尽さと世界と自分の心を何かしらのもっともらしさで結びつけて、「神から承認欲求を得る」という仕掛けが、現代における宗教の役割だと思っています。

「(友達がいなくても)神は自分のことを見てくれている」

「(周りの人間が自分を見下していても)神を信じる自分は死後救われる」

そんな動機で宗教にすがる人を、僕は笑えません。
不遇な境遇を努力で克服できる人はいますが、克服できない人は努力が足りない怠け者とは限りません。世の中には努力すらままならない、真の弱者が一定の割合で存在します。
彼らが救いを求めるとき、不遇さを受け入れるストーリーを内包した宗教が選ばれるのも自然の流れかもしれません。
ただ、キリスト教や仏教といった伝統的な宗教は、ストーリーがそれほど現実離れしておらず、世界との齟齬も少ないから広く受け入れられやすい一方で、対象が広いぶん、得られる承認欲求はそれほど多くないかもしれません。一方、たとえばオウム真理教は教義や活動の極端さゆえに信者は強烈な承認を得られそうですが、彼らは信仰の果てに罪のない人を殺しました。
統一協会や、宗教とは違うけどネトウヨなんかもオウムに近い性質があると思います。元オウムの上祐氏もそのような発言をしていました。他人を見下し攻撃することで快楽を得るとともに、「人を傷つけることができる自分」という存在を悪の親玉に認めてもらうことで承認欲求を満たす。自分の「救い」のためにほかの人を犠牲にする、まさに悪としか呼べない存在です。こんな「救い」を僕は絶対に認めない。

立て札を持って繁華街に立っていた若者も、そこに自分の居場所がある、自分の存在を認めてくれる根拠があるから、そうしていたのでしょうか。彼らの教義の根底には選民思想みたいなものがありそうですが、少なくとも見た目はほかの人を攻撃しないし傷つけもしてないから、許容できます。
同世代の若者のように友達と遊んだり恋愛を楽しんだりできない悲しみを抱えながら、ようやく承認を得られた、居場所を見つけられた安堵を感じている。そんな感情があの表情に表れていたのでしょうか。
彼は、救われているのでしょうか?
救いを得るならもっといい方法がありそうな気がするのですが、その方法にアクセスできる人はたぶん恵まれた人です。
不幸な人がひとりでも多く救われるために、不幸でない僕らは何をすればいいのでしょうか?
すぐにできることといえば、かつてのオウムや今のネトウヨのような「間違った救い」から人々を遠ざけるように仕向けるくらいでしょうか。

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