AKB48の前田敦子さんの卒業について思ったこと

2012年3月29日(木) 00:05 | アイドル

「主要メンバーが抜ける」という珍しい例

アイドル業界にとっては、かなりのビッグニュースですよねこれ。
人気アイドルグループの中心メンバーが抜けた例って、すぐ思い浮かぶところだとモーニング娘の後藤真希さんですけど、あのグループはある意味で主要メンバーの入れ替わりが前提というか、「それも含めてモーニング娘」という姿勢なので、比較対象としてはふさわしくない気がします。
「いなくなるはずのないメンバーがいなくなる」という意味で、かなり珍しい例だと思います。過去には「CoCoの瀬能あづさ」「TPDの篠原涼子」「℃-uteの梅さん」「ももクロのあかりん」などの例がありましたけど、グループの人気と、抜けるメンバーの重要性を考えると、やはり「AKB48の前田敦子」のインパクトにはかないません。

実はAKBについてはそれほど追いかけてなくて、見ているのは「AKBINGO」と「週刊AKB」などのバラエティ番組くらい。昔はこれらの番組であっちゃんの元気な姿が見られたのですが、最近は「神7」の面々が出ることは珍しくなり、見るのはチーム4ばかり。フロントメンバーが勢ぞろいするゴールデンタイムの番組はあまり見ないから、前田さんや板野さんが今どうしているのかすらよくわかっていなかったりします。個人的にはあっちゃんやゆきりんより島田晴香さんや島崎遥香さんの方が好きだったりします。

歌もドラマも映画も当たったアイドルなんてほとんどいない

いやしかし、篠田さんや大島さんや小嶋陽菜さんや板野さんより先なのはびっくりしました。
たぶん、AKBやその他の活動でここ2~3年ほぼ休みなしで働き続けてきたわけだから、楽になりたいという気持ちはあったと思います。誰よりも忙しい中でいろんな仕事を入れられて、それで映画の入場者数がどうとかドラマの視聴率がどうとか叩かれて、正気でいられる方がおかしいってもんです。
過去のアイドルで、歌もドラマも映画もすべて成功した人って、ぱっと思いつく限りでは山口百恵さんと中山美穂さんと小泉今日子さんくらいです。この方々に匹敵するアイドルなんてそうそう出てくるものではありません。あの松浦亜弥さんですら無理だったわけですから、前田さんに過剰な期待をすべきではありませんでした。
前田さんはまだ若いのですから、AKBという重すぎる看板を降ろしたあとで、じっくりとひとつひとつの仕事に向き合っていけばいいと思います。

AKB48はスポ根物語

それでネットでは「次のエースは誰か」みたいなことが書かれていたりするわけですが、アイドルグループに「みんなに認められるエース」って本当に必要なんですかね。アイドリングファンの僕としては「自分の好きな子がエース」でいいと思ってるし、メンバー内で「公的に」序列を作るやり方は好きではありません。
そう、前田さんの卒業がこれほど大きなインパクトを与えている理由は、前田さんの存在が「公的に認められた序列の最上位」だからです。ももいろクローバーの早見さんやぱすぽの佐久間さん、アイドリングの谷澤さんやフォンチーさんの卒業と決定的に違うのはこの点です。モーニング娘の歴代メンバーの卒業についても同じことが言えると思います。
この感覚はプロスポーツに近いのかもしれません。古い例ですが、同じ年にプロ野球の読売ジャイアンツの長嶋茂雄と森昌彦が引退しました。両者のマスコミの扱いは歴然でした。実力やチームへの貢献とは別の評価軸、すなわち「マスコミが認めた人気者」という一点だけで、長嶋茂雄の引退式はいまだにVTRが流されるわけです。
そう考えると、AKBって昔のスポ根漫画に通じる要素が見られます。そもそもリーダーのたかみながスポ根の権化って感じですし。
ドキュメンタリーで舞台裏を見せたり、そこでみんなが感動の涙を流したりするのもスポ根的です。華やかなステージの裏側で、メンバーはこんなに努力しているんだという姿。そこで勝ち抜いた人のみがレギュラーになれるという厳しい現実。AKBには「センター」や「選抜メンバー」という誰が見てもわかりやすい目標が設定され、そこに向けて努力する姿はまさにスポ根です。
ただ実際には、センターや選抜に選ばれるのは純粋な実力というより、運営側の戦略や好み、選抜総選挙に代表されるようなファンの声の方が重視されます。そもそも何をもって「実力」を測るのかもあいまいです。それでもメンバーたちは努力するんですよね。ステージの華やかな場所に立ち、テレビや雑誌で自らの存在をアピールし、それによって富と名声を得るために。

じゃあほかのアイドルグループはどうなのかといえば、当然ですが努力しているわけです。ただ、スポ根的な意味での「競争意識」はあまりないように見えます。たとえばアイドリングは別にグループ内で競い合う関係じゃないですし(番組内での相撲とかは別)、他のグループと競う気もなさそうですし(「魁!音楽番付」での「ももアタック」とかは別)。もちろん個々のメンバーにとっては「ダンスでは○○ちゃんに負けたくない」みたいな意識はそれぞれあると思いますけど、AKB系のように「選抜/アンダー」「正規メンバー/研究生」みたいな待遇の差はないので、仮に○○ちゃんが怪我をしても「これで私の出番が増える!」といって喜ぶ人は誰もいません。
ももクロもあれだけの歌とダンスをやりきるために相当な努力をしているはずですが、それも「誰かと競う」という性質のものではなく、スポ根特有の悲壮感は見えません。「私たちが倒れるか、お前たちが倒れるか、勝負だ!」という煽りで観客との共闘関係を築くプロレス的な世界観であり、言ってみればスポ根のパロディです(高城れにさんのダイエットはガチに見えましたが)。

「悲壮感」を見せるか見せないか

そう、悲壮感を見世物にするかどうか。これが重要なポイントです。
スポ根ものの主人公は悲壮感をばねに成長していきます。AKBの選抜総選挙なんてまさに悲壮感を詰め合わせにしたイベントです。重いものを背負って逆境に立ち向かう主人公が好きなのが日本です。アスリートがオリンピックを「楽しむ」と言って、結果が出ないと叩くのが平均的な日本人です。
思えば初期のモーニング娘も、悲壮感を演出するための「ASAYAN」という舞台装置がありました。振付師の夏まゆみさんが、普段はあまりメンバーを厳しい言葉で叱ることはしないのに、テレビの演出のためにそういう場面ばかりが放送されて、現実とは異なる印象をファンに与えてしまって困った、みたいなことを語っていたのは、テレビ側がモーニング娘に「スポ根」という物語性を押しつけていたことの証明といえます(それでも当時は「コテコテのアイドルとアイドルソング」そのものが欠乏していた時代だったので、モーニング娘は僕もすごく好きでした)。

ほかのアイドルも実際には「長い時間働いても売れない、給料が上がらない」「一日中握手会でつらい」などなど、そこらじゅうに悲壮感が漂っていると思いますが、表ではそれを売り物にしない、あるいはネタとして笑いに変えるという態度で臨んでいます。Perfumeも長い下積みのあとにブレイクしましたが、彼女たちの魅力は中田ヤスタカさんの楽曲と、3人の人柄とふわふわしたトークです。そこには「努力、友情、勝利」の少年ジャンプ的価値観など微塵もありません。
最近はPerfume的なアイドルグループが増えてきたように思います。個人的にはバニラビーンズの地上波での活躍をもっと見たいのですが。

初期モーニング娘やAKBのようなスポ根路線が苦手な層に対して、Perfumeやアイドリングやももクロはスポ根悲壮感アイドルのオルタナティブとしての存在感を十分に発揮し、結果を出しています。その点、現在のハロプロ勢はどっちつかずな気がします。今さらASAYAN路線には戻れないですし、中途半端なことをしてもAKBの後追いになってしまいます。かといって今あるグループの色を変えることは難しいでしょうし。スマイレージは素材はいいのに、楽曲とか脱退者とかいろいろマイナス要素が多くて残念です。

「エース」は必要なのか?

話が飛びまくってしまいました。根拠のない妄想をもとに長々と書いてきましたが、先ほど呈したひとつの疑問「アイドルグループに公的なエースは必要か?」について、あらためて考えてみたいと思います。
グループである以上、どうしてもメンバー間の人気の差は生じます。通常であれば、最も人気を集めたメンバーが「エース」と呼ばれ、そのグループの顔となります。AKBなら前田敦子さん、初期のモーニング娘なら安倍なつみさんです。
ここで、一番人気の子をエースとして前面に押し出すか、あえてそうしないかという選択肢が生まれます。AKBは一般の人々に最も注目されるゴールデンタイムの歌番組で、一部の楽曲を除いてずっと前田さんをセンターに立たせました。そうしていつしかマスコミに「不動のセンター」という冠をかぶせられた彼女の姿は、かつて「フォークの神様」として持ち上げられ、悩み苦しんだ末に失踪してしまった岡林信康さんを思い出させます、といったら言いすぎでしょうか。言いすぎですね。
一方、かつてのモーニング娘は、楽曲によって後藤真希さんや石川梨華さん、吉澤ひとみさんを目立たせたりするなど、必ずしもセンターを安倍さんに固定しませんでした。遠くない将来に主要メンバーが卒業することを見越した戦略だったのかもしれません。
おそらく、AKBも向こう1年くらいは前田さんをエースに据えた体制を続けたかったんじゃないかと想像します。ただ、巨大なグループで長くトップに君臨した人が、グループに在籍したままその座を譲るのは難しいでしょうし、トップのままグループを去るのが本人にとっても、おそらくグループにとってもベストな選択だと思います。「あっちゃん単推し」のファンを失うのは痛いでしょうけど。

前田さんの卒業が発表される前日には、SKEの松井珠理奈さんとNMBの渡辺美優紀さんが期間限定でAKBに入ることが決まりましたが、これも「前田以後」を見越しての動きだったのでしょう。僕にとっての珠理奈ちゃんの印象は「隙がなさすぎて、逆にある種のファンの受けがあまり良くない」というものですが、ライトなファンには支持されやすいと思うので(一方の松井玲奈さんはどこか頼りなげな「守ってあげたくなる」という印象が、ある種のファンに支持される理由じゃないかと思っています)、ゴールデンタイムの番組では思い切って主役を張らせるのもおもしろいと思います。僕もSKEの松井ならJ派です。
この動きから読めるのは、どんな形にせよ、AKBは新しい「エース」なり「センター」を据えようとしていることです。今までそういうシステムでやってきたのだから当然の流れです。既存のメンバー、たとえば渡辺麻友さんや柏木さんをその地位に座らせるのか、かつてのモーニング娘のように曲によって役割を変えるのか、はたまたSKEの松井珠理奈さんにその大役を任せるのか、あるいはそのどれでもないのか、それは誰にもわかりません。
いずれにしても、AKB系のスポ根物語はこれからも綿々と続けられるわけです。ただ、そのためには「エース」として認められるほどの人材が常にいなければいけないわけで、それはかなり高いハードルです。前田さんが背負ってきたプレッシャーを、まゆゆが同じように受け止められるかはわかりません。

それよりは、ひとりひとりは飛び抜けたインパクトがなくても、派手ではないけど楽曲やダンスのクオリティが高い東京女子流とか、冠番組でのとんがった企画とバラエティ能力で異彩を放つアイドリング、ハロプロならBerryz工房のように、「この人がエース」という売り方をしないグループの方が結果的には長続きしやすいと思いますし、個人的にはそういうグループの方が見ていて楽しめます。
グループ内外での競争に伴う「悲壮感」を、アイドルグループの中に見たいと僕は思いません。もちろんAKBのすべてが悲壮感でできているわけではなく、普通のアイドルとしての魅力も備えているし、好きなメンバーもいるので、これからも注目したいと思います。でも6月にはまた選抜総選挙をやるとのことで、なんかもう、これ以上10代の女の子に涙を流させるのは酷だと思いませんか運営の皆さん。真剣に勝ち負けを競って涙を流すのは「アイドリング大相撲」だけでいいんです。

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