3週間前に元同僚の編集者と会った話

2011年10月23日(日) 04:03 | 日記

2000年の夏から2004年の春先まで名古屋の某出版社に務めていまして、そこで風俗情報誌の編集というちょっと変わった仕事をしていました。
少し前に出た「実話ドキュメント」という雑誌で、その会社が山口組のフロント企業ではないかという書かれ方をされていて、会社の会長と風俗業界、弘道会(山口組の一次団体で現組長の出身母体)の関係についても触れられていました。僕が働いていた会社が、社名のイニシャルのみとはいえ、有名なヤクザ情報誌に取り上げられたことがうれしくて、つい雑誌を買ってしまいました。
そんなダークな会社だから、その中身も今で言う「ブラック企業」を絵に描いたような環境でした。膨大な仕事量と少ない給料。残業代ゼロなのに遅刻にはペナルティ。社員を粗末に扱うことだけは超一流で、今思い出しても腹が立つことばかりです。でも、ここでの経歴がなければきっと今の自分の居場所もなかったし、普通の人が経験できないことをいろいろ経験できたので、後悔の気持ちはありません。当時の経験やノウハウのうち、利用できるものはほとんど利用してきたつもりです。

その会社はブラック企業の例に漏れず人の出入りが激しくて、中身も玉石混淆でした。先日ひさしぶりに会った元同僚のAさんは、数少ない「玉」のひとりでした。Aさんは僕より少し後に入社して、僕が辞める1年くらい前に会社を去りました。「玉」であればあるほど会社に見切りをつけるのが早いのも社風でした。
Aさんは、かつての同僚のつてで名古屋の出版社などに務めたあと、やはりかつての会社の先輩のつてで上京し、編集プロダクションで働いていました。2年ほど前に、その編プロから何度か風俗関連の原稿の仕事をいただいたことがあるのですが、そのときは電話とメールでのやり取りのみでした。Aさんに会ったのは、これもあの会社の関連なのですが、3年くらい前に先輩の結婚パーティーで名古屋へ行ったとき以来です。

10月1日、土曜日。中央線の某駅で待ち合わせて、適当に店を選んで入りました。
編プロを辞めて、今は別の出版社で働いているというAさん。編プロ時代に、ほぼひとりで編集したというムック本を見せてもらいました。そこでAさんは自ら、超大物ミュージシャン2人をインタビューしています。なんてうらやましい。かつての同僚がこんなすごい仕事をしていることに、自分までうれしくなりました。しかも、そのミュージシャンを撮影したカメラマンも元同僚。ああ、みんな東京でがんばってるんだ。
その後、なぜかフォーク居酒屋へ行くことになって、僕は友部正人さんの「6月の雨の夜、チルチルミチルは」を人前で初めて弾き語りしました。歌詞カードがないから詩が途中で飛んだり、コードも途中でぐちゃぐちゃになったりして、その場にいたお客さんにとってはかなり聞き苦しかったことと思います。この後もいろんな店へ行って、夜明け前まで飲んでいました。

ひさびさにAさんと会って思ったのは、人との接し方が、なんていうか「編集者向き」だったんですよね。僕はいつも自分の殻に閉じこもり、そこから出ようとしない根暗な人間。何でも自分の頭の中だけで処理しようとする習性があります。一方のAさんは、人との距離の取り方がうまく、取材や交渉などの場でうまく立ち回れるタイプだと思いました。Aさんの元上司で、名古屋でも共通の先輩だった人も、タイプは違うけれどそういう人でした。
かつての同僚が同じ業界で活躍する姿に勇気づけられる一方で、編集者やライターに必要な能力が備わっている人と、そうでない人の差を思い知らされて、不安な気持ちになりました。「文章を書くための小手先のテクニック」ならそこそこ自信があるのですが、ライターにとってそれよりずっと大切なのは、ネタを集めるための人脈、人脈を築くための人柄や交渉力、それを実現するための行動力です。
今の僕は、人脈は完全に会社に依存していて、人柄や交渉力についても会社という後ろ盾に頼っているのが現実。自分の力で何かをしているわけではありません。このままだと未来は真っ暗なので、Aさんを見習って人格を改造する必要があるのですが、天性の怠け者である僕にとっては、それがとても苦しいことだったりします。実際に会社でも、僕の人間性に起因することで問題を起こしていて、実はわりと危うい立場です。かといってストレスで体を壊したり、精神が不安定になることもほとんどないから、心療内科へ行くようなレベルでもない気もするし。こんな自分が性格を矯正するためにはどうすればいいのか、詳しい方がいたらぜひ聞きたいです。

翌週の10月9日は、Aさんがやっているバンドを見るために、都内の某ライブハウスへ行きました。ギター、ベース、ドラムスというシンプルな構成で、風俗やテレクラをテーマにしたロックなナンバーを奏でていました。
そのバンドにもかつての会社の先輩がいます。この先輩は、僕が入社した3か月後に会社から突然姿を消したので、ほとんど絡みはなかったのですが、発想力やギャグセンスが電気グルーヴの石野卓球ばりに天才的だったことはよく覚えています。今では編集業とは直接関係のない正業に就いていますが、10代の頃から裏社会にどっぷり浸かっていて、その経歴だけで1冊ベストセラーが作れそうなくらいです。ライブ後の飲み会でも、ここではとても書けないような話を聞かせてくれました。
あの人はいろんな世界でいろんな人を見てきたから、肩書きが人間の価値を表さないことをよく知っていて、相手が権力者でもヤクザでも貧乏人でも分け隔てることなく、同じ人間として接しているように見えます。社長や芸能人を前にすると必要以上にびびってしまう自分が、みすぼらしくなってしまいます。

そんな刺激的な2週間でした。
今度はもっとうまく弾き語りがしたいし、僕も一度でいいからバンドというものを経験してみたいと思いました。演奏がめちゃめちゃうまくなったらポストロックバンドを組んで、ロンドンあたりで喝采を浴びることができたら最高に幸せなんだろうな。そういえば今年の目標に「何か新しく楽器を始める」って書いたけど、まだ実現できてないや。

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