バンドブームとアイドルブームと渋はちライブ

2014年3月 6日(木) 02:00 | アイドル

今日のアイドリング!!!の渋はちライブは「バンド名曲カバー」という企画でした。
バンドといってもめちゃめちゃ幅広いので、どういう曲を歌うのか想像がつきませんでしたが、1曲めにジッタリン・ジンの「エヴリディ」を10人で歌って、一気に気分が盛り上がりました。「いか天」が始まったバンドブームの頃に中学生だった僕には涙ものの選曲です。いろんなアイドルがカバーしている「夏祭り」でもなく、ヒット曲の「プレゼント」や「にちようび」でもなく、僕の好きなメジャーデビュー曲の「エヴリディ」を選ぶのがツボでした。

1990年頃の邦楽シーンは、アイドルの楽曲と、J-POP(という言葉があったかどうか微妙な時期ですが)とは明確に分かれていた気がします。
ひと世代前に松田聖子というアイドル界のレジェンドがいて、聖子さんに楽曲を提供していたのが細野晴臣さんや松本隆さん、松任谷由実さん、財津和夫さんといったこれまたレジェンドなミュージシャン。この巨匠たちが支えた松田聖子というアイドルの成功によって、アイドルソングのフォーマットが確立したといえます。
アイドルソングですから、歌うのはアイドルに限られます。だから、アイドルしか歌わない曲と、それ以外のJ-POPはすみ分けができていました。中森明菜さんや本田美奈子さん、工藤静香さんなんかはJ-POP寄りの楽曲も歌っていましたが、南野陽子や浅香唯さん、CoCoやribbonや高橋由美子さんをはじめ、多くのアイドルの楽曲は伝統的なアイドルソングの文法に則っていました。

だけど、アイドリング!!!が歌う「エヴリディ」を聞いたとき、なにひとつ違和感がありませんでした。持ち歌かってくらいなじんでいるように思えました。
あれから四半世紀がすぎて、僕の中の「アイドルソングのフォーマット」が大きく変わっていました。

10代の頃に好きだったアイドルは、80年代に完成したアイドルソングのフォーマットと不可分でした。
だから、スーパーモンキーズやSPEEDの楽曲は、自分の理想とするアイドル像とかけ離れていたので、自分の中ではあまり受け入れられませんでした。当時好きだった東京パフォーマンスドールも、「アイドルとは違うジャンル」と認識していました。
1998年にモーニング娘。がデビューしたときは、ようやく待ち望んでいたアイドルが現れたと感激したものです。メジャーデビュー曲の「モーニングコーヒー」は、完璧に80年代のアイドルソングのフォーマットに沿っていました。
ところが、プロデューサーのつんくさんは、古き良きアイドルソングを量産する道を選ばず、いろいろなタイプの楽曲を実験的に打ち出していきました。大ヒットとなった「LOVEマシーン」は、昔のアイドル曲とは似ても似つかない楽曲でした。でもあの曲は僕を含め、たくさんのアイドルファン、あるいはJ-POPのリスナーに支持されました。
もちろん、当時のモーニング娘の楽曲をHysteric Blueやセンチメンタル・バスあたりが歌ったらやっぱり違和感があるわけで、その意味で当時もアイドルソングとJ-POPのすみ分けはできていたといえるのですが、それでもモーニング娘の楽曲は、僕の頭にこびりついていた「アイドルソングのイデア」を壊すほどのインパクトがありました。

よく言われることですが、最近のJ-POPやアイドルソングは「高速化」が顕著になっています。テンポが速い楽曲が増えてきました。
80~90年代のアイドルソングと今とを比べてみると、たとえばCoCoがももいろクローバーの「行くぜっ!怪盗少女」を歌っているところを想像してみると、違いが分かりやすいのではないかと思います。
たぶん昔の自分だったら、速いってだけで「こんなのアイドルじゃない!」と拒絶していました。20年近く前に安室奈美恵さんの「TRY ME」を初めて聴いたときも、やっぱりしっくりきませんでした。
それが、今はすんなりと受け入れられるから不思議なものです。むしろ、テンポの速い楽曲やロック風味な楽曲をもっと歌ってほしいとすら思います。
アイドリング!!!はこのところ「サマーライオン」「シャウト!!!」と激しめの曲が続いていたこともあって、ロックバンドの楽曲であるジッタリン・ジンの「エヴリディ」や、ライブでラス前に歌ったプリンセスプリンセスの「世界でいちばん熱い夏」も、違和感なくはまっていました。

最近はロックバンドや、いわゆるロキノン系とか昔の渋谷系のミュージシャンがアイドルの楽曲を書くことが増えています。アイドル向けの曲なんだけど、日本のロックシーンの流行を取り入れていたり、どこかとんがった部分があったりします。東京女子流やでんぱ組.inc、Negiccoなんかを見てると特にそんな感じがします。
アイドルソングとJ-POPの垣根は、かつてないほど低くなっているように思います。今日の渋はちライブを見て、その思いをさらに強くしました。

ここまでが前置きです。ここからが本題のアイドリングの話です。

バンドのボーカルは、アイドルの歌とは違って声量が求められます。エレキギターやエレキベース、ドラムスに負けないくらい声を張らないといけないので、バンドの楽曲はどれも豊かな声量が前提条件になっています。
河村さんはさすがでした。アイドリングの楽曲以上に、思いっきり声を張って歌っていました。サンボマスターの「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」では低音を響かせ、ねごとの「カロン」(実はこの曲、知りませんでした)では逆に高音を出しっぱなし。またそれがすごくいい声。ロックミュージシャンを父に持つ河村さんの本領発揮です。
その河村さんに負けないくらいの声で歌っていたのが古橋さん。JUDY AND MARYの「イロトリドリノセカイ」を、YUKIさんにも引けを取らない声量で歌いきりました。まだ中学3年生。将来はルリカさんのようにソロで勝負できるのでは、と期待させてくれます。
意外だったのが玉川さん。低音域だと声が安定するんですね。持ち歌よりうまく歌えていた気がします。
楓ちゃんは、本当に何を歌ってもアイドルになる。そういえば楓ちゃんが渋はちで松田聖子さんの「赤いスイートピー」をひとりで歌ったのは、ちょうど1年前のひな祭りの日でした。楓ちゃんにかかれば、どんなバンドのどんなロックなフレーズでも、そこだけピンク色の光景が広がります。アイドルになるべくして生まれた、唯一無二の才能です。

三宅さんがZONEの「true blue」を歌ったときに、歌い出しが合わずに最初から歌い直したり、清久さんが同い年の瑠果ちゃんといっしょにいきものがかりの「1 2 3~恋がはじまる~」を歌っていたときに実は鼻血が出ていて、途中から鼻の穴にティッシュを詰めていたり、慣れない楽曲ゆえのハプニングもありましたが、それもアイドルのライブならではの楽しみです。三宅さんも2回めは堂々と歌えていました。
カバー曲ではメンバーの普段見られない一面が見られるので、今後もぜひ続けてほしいと思います。

カバー曲のライブは、スタッフ(というかディレクターの森さん)がどんな選曲をしてくるかというのも楽しみです。1曲めの「エヴリデイ」にもしびれましたが、アイドリングファンどころか一般の知名度も決して高くないPOLYSICSの楽曲を入れてくるという攻めの姿勢にもしびれました。知らない曲でしたが、POLYSICSらしい浮遊感のある曲に、大川さんと高橋さんの不思議なダンスが加わって、なんか知らないけど楽しい気分になりました。
アイドルが有料ライブでサンボマスターとPOLYSICSの曲を立て続けに歌う。こんなライブ、後にも先にもないと思います。貴重な瞬間に立ち会うことができて幸せでした。
客層を考えて古めの曲で固めてくるかと思ったら、新しい曲も入れてきました。いきものがかりのヒット曲や、ねごとやケラケラの楽曲。最近はバンドとアイドルの対バンライブが増えてきたし、元アイドリングの遠藤さんの新曲を提供するのも赤い公園だったりするので、こういう形でアイドリングのファンが最新のJ-POPに触れるのも意義があると思います。

自分が若い頃そうだったように、アイドルソングはJ-POPや日本のロックから独立した、アイドルらしさを体現する楽曲であるべきだという意見もあります。実際に、アイドル最大手のAKB系はそういう路線です。だからこそあれだけの支持を集めているという面もあります。
そうした楽曲も楽しみつつ、かつてのバンドブームで歌われたような楽曲、最新のJ-POPテイストな曲、あるいはもっととんがった曲もアイドルソングとして楽しみたい。僕はそういう姿勢でアイドルを見ています。今回のライブの最後に歌った、今日のどの楽曲よりも激しいアイドリングの「シャウト!!!」みたいな曲も好きだし、アイドルが夏フェスに出たり、ロックバンドと対バンをやるような、10年前にはとても考えられなかったアイドルブームにわくわくしています。
欲を言えば、自分がもっと演者に近い年齢のときに今の状況に立ち会いたかったという気持ちもありますが、37年生きてきたからこそ今のシーンを楽しめるという面もあるので、うだうだ考えずにとりあえず楽しめばいいや、とだけ思っています。

1時間そこそこのライブについて書こうとしたら、無駄に大きな話になってしまいました。

コメント

読ませてもらいましたが なにせ 疎いからよくわからなかったが 納得するところありです
かなり久しぶりにギターをやりはじめたので また 参考になります

アイドリング!!!に限らず、自分でギターを弾いてみたくなるようなアイドルの楽曲が増えたのはおもしろいと思います。
アイドリングの場合はシーン全体のいいとこ取りをしようとする傾向があって、悪く言えば楽曲に一貫性がないけれど、いろいろなタイプの曲が聴けて楽しいと思っています。

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